単年契約の問題点

松井にも日本人のみなさんにも謝りたいサポティスタ

この記事を読んで、思い出したことを少し。やはり『速報!サッカー24』で編集をしていた時の話だ。


クラブで出番のない選手は、他のクラブに移籍するべきではないか?そういう質問を岩本輝雄さんにしたことがある。コラムのネタを打ち合わせた時のことだ。テルさんは移籍の多い選手だったので賛同して頂けると思ったのだが、そうでもなかった。選手にとって移籍はリスクが高いというのが理由だった。実際テルさんにも、移籍せず残留すれば良かったと思うことがあったようだ。それでは、なぜ移籍をしたのか?その質問には、このように答えてくれた。


「サッカー選手は試合に出ないことには評価されない。監督と意見が合わず試合に出られないのなら、リスクがあっても移籍した方がマシだと思っていた。特に若い頃は(笑)」


移籍はリスクが高いと思いながらも移籍をする。いろいろと話を聞いているうちに、日本では主流となっている単年契約に問題があるように思えてきた。単年契約はさまざまな問題点(例えば、欧州移籍の際の違約金)を抱えていると思うのだが、ここでは監督と選手とクラブの関係についてのみ言及する。


例えば3年契約をした選手の場合、3年間のどこかで活躍をすれば、クラブから(ポジティブな意味とは限らないが、少なくても試合でのパフォーマンスを)評価される。シーズン開幕当初、監督から構想外だと思われた選手も、1年間を通じて自分のプレースタイルを監督に認めさせることができれば、翌年からはチャンスが巡ってくる。また、監督がシーズン途中で交代する可能性だってある。


もちろん、監督も複数年契約を結ぶことがある。しかし、チームが成績不振となれば、真っ先に反故とされるのは周知の事実。少なくても、選手に責任を取らせる(解雇する)というクラブは稀だ。クラブは可能な限り選手を抱えておき、(監督の交代などにより)選手選考基準に変更があった場合に対応できるようにしたいと考えるはずだ。


今回、松井大輔が“出場機会を待つ”選択ができたのは、サンテティエンヌと3年契約を結んでいたことが影響していると思われる。もし単年契約であったら、練習に集中してクラブ首脳陣に認められるように努力するなんて、悠長なことはできなかったはずだ。冬の移籍市場に備えて移籍志願をするなど、グラウンド外の活動に励む必要があるからだ。


単年契約の場合、常に結果を出さないといけない緊張感のある環境でプレーできる。こう表現すれば聞こえは良いが、実際には逆。試合に出られるのなら、ケガをしない程度にプレーすることの方が重要になる。全力でプレーしたとしても、シーズン序盤に負傷して長期離脱したらそれまで。シーズン終盤、ようやく試合に出られるようになったとしても、年俸の大幅ダウンは必須。翌年の契約すら危うい状態になるのだ。


そんな選手はいないと思うが、そう思っている選手がいたとしても責めることはできない。「ケガ=失業」が現実味を帯びているのが、日本サッカー界の実情なのだから・・・。サッカー選手にとってハングリー精神は必要なモノかもしれない。しかし、実際にハングリーな環境下でプレーすることが、選手にとってプラスになるとは限らない。むしろマイナスに働いているのだ。


※もちろん、ケガによって選手生命を終える選手は欧州にもいる。ここでは、全治数ヶ月のケガをした結果、引退(失業)を余儀なくされる現状を指している。


また単年契約は、Jリーグから個性的な選手が生まれない理由とも考えられる。試合に出場するため、監督からの指示通り動くことが要求されるからだ。個性を出した結果、監督から干されたらそれまで。選手だって生活が懸かっているのだ。自分の個性を伸ばす余裕など存在しないも同然なのだ。

転載元
単年契約の問題点(サッカー景気の悪い話)